現在、大学スポーツの統括組織(通称スポーツ局)設置が、大学スポーツ協会(通称ユニバス)主導で進んでいます。それらスポーツ局の中には、一年間の活動をまとめた「活動報告」を公表する大学もあります。今回は、アメリカ大学スポーツ局の「活動報告」を、先日リリースされたデューク大学体育局活動報告(Duke University Department of Athletics Annual Report)を事例に見ていきたいと思います。なお、アメリカ大学は、秋が新学期になるため、7月~6月が一般的な会計期間となります。
全体の構成
全体のハイライト
新しい指導者の雇用
学業面の成果
ドラフト結果
表彰
スポーツ局部署の活動
各運動部活動振り返り(アメリカ大学では、スポーツ局の中に各運動部が位置付けられているので、チーム成績もスポーツ局の報告の中に含まれます。)
1.新しい指導者について
興行収入があるスポーツ(アメリカンフットボール、男女バスケットボールや野球等)の監督交代は、大学スポーツステークホルダー(大学教職員、学生、保護者、地域住民や支援者等)にとって、とても気になるトピックの一つです。今年は特に、Duke大学男子バスケットボール監督であり、バスケットボール界のレジェンドである、コーチK( MIKE KRZYZEWSKI)の退任と、後任の Jon Scheyer氏が決まった年であり、報告書では大きく取り上げてられいます。
2.学業面の成果
Duke大学における、2011年入学の全運動部学生の卒業率 (Graduation Success Rate)は、99%で全米で見ても高い結果でした。また、卒業率の早期指標として開発された、 Academic Progress Rate (APR※)でも、27チーム中、14チームが満点の1000点でした。
※APRの詳細は、こちらをご覧ください。
3.ドラフト結果
Duke大学で最も有名な運動部は、男子バスケットボールです。コーチKの在籍した42シーズンの間に、5度の全米チャンピオンとなり、1,129勝(309敗)という輝かしい成績を残しました。そして、大学からプロに進む選手も多く、今年のNBA(National Basketball Association)ドラフトでは、全体一位の Paolo Banchero選手を始め、5名の学生選手がDuke大学から指名されました。
4.表彰
「 Elite 90 Academic Recognition Award Program」でも取り挙げましたが、アメリカには、運動部学生の学業と、部活動の両立を表彰する団体が多くあります。名誉なものとして、全米で最も学業が優秀と表彰される、「Academic All-American」には、48名のDuke学生選手が今年選ばれています。
5.スポーツ局の活動
アメリカ大学におけるスポーツ局の特徴は、学生選手が大学生活に必要な支援のほぼ全て(授業を除く)が、スポーツ局に集約されていることです。支援体制の規模は、大学規模(多くの場合予算)に強く影響されますが、スポーツ医学、コンプライアンス、マーケティング、学業支援、地域活動、人材育成(Professional Development)など、Duke大学スポーツ局の支援について紹介されています。
6.各運動部活動振り返り
アメリカ大学では、スポーツ局の中に各運動部が位置付けられているので、チーム活動報告もスポーツ局の報告の中に含まれます。ここでは、シーズンの振り返り、試合スケジュール、選手名、チーム・個人の競技成績や表彰内容が競技別に紹介されています。
7.まとめ
スポーツ局活動報告書は、単に大学スポーツの業績を集めたものではなく、大学として、運動部活動におけるガバナンスと支援内容を具体的に示したものです。スポーツ局の支援機能について、規定があるNCAAに対して、日本では、スポーツ局組織体制や支援範囲は、各大学で異なります。一方で、Duke大学のような報告書(全57ページ)は無理でも、学外からは見えにくい、運動部学生への支援についてまとめた「活動報告」は、大学スポーツステークホルダーに、活動を理解してもらう上で有用なツールとなると思います。
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