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大学スポーツを「グッドライフ」に寄り添う社会インフラへ再定義する

  • 執筆者の写真: Masaru Ito
    Masaru Ito
  • 1月22日
  • 読了時間: 5分

大学スポーツを、在学中の競技活動にとどめず、卒業後も学びや健康、社会参加を通じて人生に寄り添う基盤として再定義する。少子化により入学者数に依存した大学経営が難しくなる中、大学スポーツを継続的に価値を生み出す経営資源として活用していく。



1.大学スポーツは「4年間の活動」から「人生に並走する存在」へ

今後大学スポーツは、在学中の4年間だけに閉じた活動ではなくなっていく。学生一人ひとりの人生において「グッドライフ(よい人生)」を実現していくプロセスに、大学が長期的に寄り添い、並走していくための場へと進化していくでしょう。競技力向上の場としてだけでなく、学び直しや健康の維持・増進、社会参加、そして人とのつながりを生み出す、人生の基盤としての大学スポーツへ。このような再定義こそが、これからの大学経営における差別化の起点となるでしょう。


2.なぜ今、大学スポーツの再定義が必要なのか

少子化の進行により、大学経営は「毎年の入学者数を確保すること」だけでは安定しなくなっています。入学者数を集めるためのコストは増加の一途をたどる一方で、単年度の定員充足が中長期的な経営の安定を保証するものではなくなっています。今後大学は、「どれだけの学生を入学させたか」ではなく、「卒業後も社会に対してどのような価値を提供し続けているか」が問われる段階に入っていくとでしょう。こうした評価軸の変化を大学スポーツの観点から捉えると、2025年に行われたスポーツ基本法の改正において、スポーツは単なる競技活動ではなく、ウェルビーイングの向上や社会課題の解決に資する社会インフラおよび文化として再定義されました。さらに、第三期スポーツ基本計画では、大学スポーツをプロフェッショナルな組織体制のもとで戦略的に推進し、競技力の向上と地域・社会貢献を両立させることが明確に示されています。すなわち大学スポーツは、在学中の活動にとどまらず、卒業後も人・地域・社会との関係を維持し続けることができる、重要な経営資源となり得るもののとして期待をされています。大学スポーツを「4年間の学生競技」から「人生に並走する社会インフラ」へと再定義することは、少子化時代において大学が選ばれ続けるための、必然的な経営戦略であるといえます。


3.人生に並走する大学スポーツを実現する具体施策

ここでは、大学スポーツを「人生に並走する存在」へと転換していくための具体的な施策を整理します。これらの提案は、大学スポーツを独立した取り組みとして捉えるものではありません。大学全体が有する教育・研究・社会連携といったリソースの一つとして大学スポーツを戦略的に活用し、「人生に並走する存在」へと大学そのものを転換していくための施策として考えて頂ければと思います。

1.リカレント教育としてのスポーツ・プログラム大学院を中心とした学び直しに加え、転職や価値観の多様化が進む時代に対応した、「人と関わる力」や「異分野に踏み出す力」を育成する講座を整備します。リーダーシップ、セルフマネジメント、チームビルディングに加え、スポーツデータ分析、コーチング、地域スポーツマネジメントなどの内容を提供し、一般学生に限らず、卒業生や地域にも開放します。これにより、卒業後も大学で学び続ける理由を創出します。

2.心身の健康を支えるオンライン基盤メンタルヘルス、スポーツ栄養、睡眠、運動習慣に関するオンライン講座を整備し、卒業後も継続して利用可能とします。あわせて、ウェルネスセミナーやOB・OG向けイベント、アスリートOBによる知見共有の機会を提供することで、年齢を問わず価値の高い健康支援を実現し、大学への信頼を高めます。

3.スポーツ施設の社会資本化と関係人口の創出スポーツ施設を卒業生や地域に開放することで、「学内資産」から「社会資本」へと転換します。会員制利用や地域スポーツ教室の拠点化、社会人・企業向けイベントの誘致などを行い、施設稼働率の向上と関係人口の拡大を同時に図ります。

4.世代を超えたコミュニティ形成ホームカミングデーや定期戦、OB会を、「観戦の場」から「人生交流の場」へと再設計します。現役学生とOB、さらにはその家族を含めた交流を、スポーツを共通言語として生み出し、世代を超えた継続的なつながりを育成します。

5.社会貢献・地域連携のハブ機能内閣府の調査(※1)によれば、63.6%が社会貢献を「したいと思っている」一方で、「時間がない」「情報にアクセスしづらい」「一緒に参加する人がいない」といった理由から行動に移せていない層が多く存在します(※2)。大学スポーツが地域プロジェクトや社会貢献活動にハブとして関与することで、情報を集約・可視化し、関係者が一緒に参加しやすい環境をつくることが可能となります。これにより、大学スポーツは競技の枠を超え、社会課題解決の担い手としての役割を明確にし、大学全体の社会的価値を高める存在となります。


4.まとめ|大学スポーツは経営戦略そのものである

大学スポーツを「在学中の活動」から「人生に並走する社会インフラ」へと再定義することは、教育理念を拡張する試みであると同時に、大学経営を支える強靭な戦略でもあります。卒業後も人との関係が持続することで大学の独自性が生まれ、その蓄積が結果として安定した経営基盤の構築につながります。少子化時代だからこそ、大学スポーツを起点に「グッドライフ」を支える存在へと進化できるか。その問いへの答えが、これからの大学の価値を決めていくでしょう。


出典

 
 
 

1件のコメント


ナガイマコト
ナガイマコト
1月23日

本提案は、大学スポーツに過剰な役割を背負わせるものではなく、スポーツを「人が集まり、関係が生まれ、行動が起きるハブ」として大学全体の資源を接続し直す構想だと理解しています。

その実現には専門家の関与が不可欠ですが、すべてを学内で抱え込む必要はなく、コアとなる企画・統括機能と、学内外の専門性を組み合わせることで、現実的かつ持続可能な形での実装が可能だと考えます。 永井

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