大学スポーツ振興を経営戦略に組み込むために― 成果の「見える化」で投資を呼び込む ―
- Masaru Ito

- 11月16日
- 読了時間: 4分
大学スポーツ振興の価値を大学経営者に理解してもらうためには、成果を「見える化」することが必要です。経営者にとって大学スポーツは必ずしも身近な存在ではなく、費用対効果をイメージしづらい場合があります。そこで、測定可能な指標と広報戦略を活用し、教育的・社会的・経営的な成果を数値など見える形で示し、大学資源を投下する価値を感じてもらうことが重要です。

なぜ経営者は大学スポーツに投資しづらいのか?
大学スポーツは、学生の成長や地域貢献に大きく寄与する大学資源です。しかし、経営者にとっては18歳人口の減少という構造的課題の中で、限られた経営資本をどこに投下するかという判断に迫られた時、スポーツ振興は優先度が低くなりがちです。
では、どう説得するか?
一つの選択肢として「成果の可視化」があります。測定可能な指標を使い、大学スポーツがもたらす多面的(教育的・社会的・経済的)な成果を明示することで、経営者の理解と投資を促すことができます。
大学スポーツは公共性の高い活動へ
第3期スポーツ基本計画では、
「スポーツをつくる/はぐくむ」
「あつまり/ともに/つながる」
「誰もがアクセスできる」
という3つの視点を軸に、大学スポーツが中核的役割を担うとされています。さらに、令和8年度スポーツ庁概算要求では、大学スポーツは「一部の学生アスリートのため」ではなく、多くの学生の人材育成の場として位置づけられています。
これらをまとめると大学スポーツ振興に期待されるのは、
教育的ベクトル(学生の主体性を伸ばす)
公共的ベクトル(地域・大学全体に貢献する)
この2軸で整理ができると思います。学生の成長と社会貢献を両立する活動の中で、健康増進、地域活性化、共生社会の実現など、大学スポーツを通じて大学の社会的価値を高める活動の展開が期待されています。

課題:効果が「見えにくい」現実
一方で、「費用対効果が見えにくい」という声は大学内で聞くことがあります。教育活動の成果は複合的な要因で生じるため、大学スポーツとの因果関係を直接的に証明することは困難です。結果、「大切なのはわかるが、最優先とは言えない」という経営判断になることもあります。だからこそ、戦略的な指標設定と評価による「見える化」が必要です。
成果を測る評価指標の具体例
大学スポーツ振興の成果を示すため、次の3つの側面から評価を提案します。
1. 施策に対する評価基準
自治体施策への採用
大学スポーツによる地域貢献活動が自治体の政策に取り入れられ、地域課題の解決と大学の社会的価値向上につながる。
外部資金の獲得
寄付・協賛金・物品提供など、経済的成果を明確化する。
2. 総合的な評価指標
直接的な因果関係は難しくても、総論として影響を示すことは可能です。例:一般学生と運動部学生の1年時と3年時の比較で成長度を可視化。
PROGテスト:社会人基礎力の伸び
学生相談・問題発生件数:トラブル減少
GPA・取得単位数:学業との両立
卒業時満足度調査:大学生活全体への貢献度
3. 広報による「見える化」
経営者が価値を感じにくい理由の一つは、活動を日常的に見ていないこと。現場視察は難しくても、SNSがその役割を補えます。大学受験生の情報収集はSNS中心にシフトしており、約8割以上がデジタルを活用しています(※)。どの大学でもSNSを通じた情報発信を強化しており、経営層がSNSを「見る」機会は高いと推測できます。
SNS戦略のブランドイメージの統一
運動部・広報課・スポーツ統括組織など、各部署の広報活動を尊重しつつ、横の連携調整を担う部署を設け情報を統合・ブランドイメージを統一を図る。
KGI設定:フォロワー数、クリック数、エンゲージメント率など。
まとめ:成果の見える化が投資を呼ぶ
大学スポーツ振興は、
学生の社会的スキル育成
地域との連携強化
大学の社会的価値向上
など、大学に多くの成果をもたらします。あとは、これらを具体的な指標で可視化することで、経営者にとって「投資する価値のある分野」として認識してもらうだけです。多くの大学で経営が厳しい今こそ、成果の見える化を通じて、大学スポーツへの投資を促進する仕組みづくりを進めましょう。
出典
※Studyplusトレンド研究所(2024)『“スマホ時代”の受験生進路モデル』を公開、学校・塾・家族に次いで大学を知るきっかけは“YouTube”



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