アメリカ大学スポーツ統括組織、NCAAから大学学生選手のメンタルヘルスに関する最新データが公表になりました。NCAAはパンデミックによる学生選手のメンタルヘルスへの影響について2020年から調査を行っており、今回の調査は3回目になります。
今回の結果では、日ごろから精神的倦怠感、不安や憂うつを感じていると回答した学生選手の割合は、2020年秋の調査からほとんど変化がないものの、その割合はCOVID-19パンデミック前と比べて引き続き高い事が示されました(パンデミック前と比べて1.5〜2倍)。一方で、絶望感を感じている割合は2020年調査と比べ改善しました。
概要
タイトル:NCAA Student-Athlete Well-Being Study (Fall 2021)
目的:新型コロナウイルスパンデミックが学生選手の心身の健康に及ぼす影響の検証
期間:2021年11月17日~2021年12月13日
対象:Division I~IIIに所属する学生選手9,808名
ポイント:パンデミックによる大学学生選手のメンタルヘルスへの影響は引き続き大きく、この問題の解決には、大学(チーム、スポーツ局、学内部署)が一体となって問題意識を共有し、課題に取り組むことが重要である。
NCAAは、加盟大学に対して、身体的および精神的健康に関して適切に対処できる環境とリソースを整えることを義務付けています。回答からも、女性学生選手の69%と男性学生選手の63%が、大学キャンパスでメンタルヘルスの相談を出来る場所を知っていると回答しました。一方で、男女半数以上の学生選手がメンタルヘルスに関するサポートを大学キャンパス内で求めることに抵抗があると答えています(女性52%、男性54%)。つまり、この抵抗感を、大学(チーム、スポーツ局、学内部署)が一体となって、どのように改善するかがポイントとなってきます。
DePauw大学のメンタルヘルスカウンセラー、Scott氏によると、チームでメンタルトレーニングを行う事でも効果的と述べています。学生選手の最も身近にいる人がメンタルヘルスへの意識を持つことで、チームとしてサポートを出来ると述べています。
今回の調査では、女性学生選手の65%と男性学生選手の58%が、チームメイトのメンタルヘルスの問題を真剣に受け止めていると回答しています。また、女性学生選手の47%と男性学生選手の55%が、メンタルヘルスが各大学のスポーツ統括組織(スポーツ局)の優先事項であると回答しています。指導者についても、女性学生選手の50%と男性学生選手の59%が、指導者が学生選手のメンタルヘルスの課題を真剣に受け止めていると回答しています。
学修経験については、2020年秋と比べて、学修成果を楽観的にとられていることが見える一方で、女性学生選手の53%と男性学生選手の44%が、部活動と学業のバランスが取れていないと回答しました。
また、全体の8%の回答者は、今年度(2022年度)中のどこかで他大学に転校することを検討していると回答し、その理由として、メンタルヘルスの問題を一番の理由に挙げています(女性61%、男性40%)
「大学入学前に、学修と部活動を両立するイメージを持とう!」でも取り挙げましたが、メンタルヘルスへの課題は、キャンパス内に十分なリソースがあっても、学生選手の抵抗感や、弱い選手として見られることへの恐怖心が、自ら助けを求めることを躊躇させていると言われています。
日本においては、メンタルヘルスについては、まだ手探りの大学が多いと推測します。だれもが心理的安全性を確保された環境で話すことができるように、まずは、日本の大学スポーツ統括組織である大学スポーツ協会(UNIVAS)が情報発信することで、各大学での議論が進むことを期待したいと思います。
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