コロナ渦において、スポーツ活動は様々な影響をうけ、特に接触をともなうスポーツの活動は多くの制限が掛けられました。以前のNCAAのコロナ感染対策ガイドラインにおいてもアメリカンフットボールやバスケットボールはハイリスクスポーツと定義されていましたが(※)、一方でそれを証明するエビデンスが示されていませんでした。そして試合時のリスクは、比較的に低いものであるという結果がテキサスA&M大学の研究者によって発表されました。
アメリカンフットボール試合時のCOVID-19接触における感染リスクに関する研究
期間:2020年9月26日から2020年12月19日
対象:アメリカSoutheastern Conference(以下、SEC)に所属するアメリカンフットボール学生選手1,190人
方法:トラッキングシステム(KINEXON)を用いて、SECレギュラーシーズン試合中に濃厚接触があったSEC選手のコロナ検査結果を調査し、試合時における濃厚接触によるCOVID-19感染リスクを分析した。
結果:
フットボールの試合中には濃厚接触といわれるコンタクトは多く発生するが、それらは非常に短時間の傾向があり、それらの大部分は26秒未満であった。
試合内でCDC(米国疾病予防センター)が定める15分以上の濃厚接触があったのは13組の選手だけで、これらの13組の選手のうち、試合後14日間でCOVID-19の検査陽性となった選手はいなかった。
1,190人のSEC学生選手のうち、138人(11.6%)がシーズン中にCOVID-19陽性となった。そのうち18(1.5%)は、試合後48時間以内に陽性と診断された。濃厚接触追跡によると、18人全員が1〜364秒(中央値、12秒)間対戦相手と濃厚接触をしていたことが明らかになったが、試合後14日間COVID-19陽性となった学生選手はいなかったため、現在のCDCの定義によれば、試合時の濃厚接触が原因による感染ではなかった。
本調査結果は、感染症対策を戦略的におこなうことで、COVID-19などの感染症をスポーツ競技中に予防および監視できることを示した。一方で、濃厚接触追跡などを戦略的におこなう場合、予防対策が徹底されていないと追跡がとても複雑になるため、活動全般において予防対策を徹底しておこなうことが重要であることが示された。
限界:本調査は学生選手同士の追跡はおこなったが、選手と審判や、選手と指導者・コーチの間の接触については調べていない。また、試合前後の接触も追跡していないため、今後はそれらの接触も含めて検討することが求められる。
Contact and SARS-CoV-2 Infections Among College Football Athletes in the Southeastern Conference During the COVID-19 Pandemic
※最新ガイドライン、Resocialization of Collegiate Sport: 2021 Fall Training and Competitionではスポーツ別によるリスクの定義はありません。
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