NCAAに加盟するアメリカの大学には、各大学のスポーツを統括する組織、スポーツ局(Athletic Department)が存在し、部活動での成功と同じく、学修での成功も大事なミッションと位置付けています。一方で、学生選手に最も近い、運動部指導者の職務を見てみると、部活指導に関する職務がほとんどで、学修に関する職務はほとんど含まれていない場合が多くあります。
例えば、ニューメキシコ大学指導者募集内容(2022年6月12日現在)を見てみると、
職務(Duties and Responsibilities)中で、学生選手の学修に関するものは、5.の一つのみで、指導者が主体的に行うのではなく、補佐的(assist)な役割となっています。
では誰が学生選手の学修を主体的にサポートするのか。答えは、アカデミックコーディネーター(Academic Coordinator)と呼ばれるスポーツ局の専門職員が、学生選手を支えています。アカデミックコーディネーターの役割と職務は以下になります。
主な役割
学修の成功を達成する上で、学生選手が学修の重要性を自ら自覚し、行動することが重要で、カデミックコーディネーター(以下、AC)の役割は、この主体的な学びをサポートする環境をキャンパス内に作りだすことです。ACは、学生選手への学修アドバイス、学業成績の把握、指導者・学内部署との連携を図りながら、個々の学生に必要な学修サポートを提供します。
主な職務
学生選手へのサポート
学生選手の出場資格(※)と学業成績を評価し記録を残す。
学内の関係部署と協力して、学生選手の学修問題に対応・改善を図る。
学生選手と指導者と緊密に連携する。
学生選手と学内教職員の連携を補助する。
学生選手の多様なニーズを理解し、それに対処する。
学生選手の学修に必要なプランニングスキルや対人スキルを向上させ、個人の成長を支援する。
学修に責任を持つ学生選手を育てる。
学内部署との業務
運動部への対応(練習見学、試合帯同、指導者との定期的な会議など)。
スポーツ局関係者、指導者、学内部署と協力して、キャンパスに前向きで協力的な環境を作り、学生選手の学修の成功を促進する。
新入生及び転校生向けガイダンス期間に、出場資格と学業成績の説明を行い、ACの役割を理解させる。
学生選手のリクルーティングを指導者と協力して行う。
日本における大学スポーツ指導者の形態も、大学教員、職員、業務委託やボランティアなど様々です。大学の教学システムに入っていない指導者に、学生の学修成果に関する責任を求めるのは難しいと感じます。大学スポーツは大学教育の一環であり、学修との両立を大学が担保するのであれば、学修の責任を指導者に預けるのではなく、ACのような職員と指導者が協働できるサポート環境づくりを検討することも一案であると考えます。
参考文献
※NCAAは学年ごとに最低取得単位数と最低GPAを定め、満たない場合は運動部参加資格を失う。詳しくはこちらから→ Berkely Athletic Study Center
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