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執筆者の写真Masaru Ito

学園祭を通じた学生・地域とつながる仕掛け作り

10月後半のこの時期は、多くの大学で学園祭が開催されます。アメリカの大学でもこの時期に、卒業生や地域の人が大学に集まるHomecomingと言われるイベントがあります。Homecomingは、学生が主体となって作り挙げ、様々な経験を積む場であると同時に、大学のステークホルダー(在校生、保護者、入学希望者、地域、教職員など)とつながりを持つ・深める機会でもあります。Homecomingには、人々を繋げるイベントや仕掛けが多くありますので、Eastern Washington Universityを事例にご紹介します。


 Eastern Washington University(以下、EWUという。)は、ワシントン州に位置する州立大学です。創立は、1882年、学生数は10, 892人で、NCAA Division Iに所属する12の運動部があり、大学のカラーは赤・白、マスコットはSwoopと言われる鷹の大学です(Wikipedia, 2022)。

 EWUのHomecomingは今週末(11月15日)に行われています。関連イベントの全体スケジュールは以下をご覧ください。イベント対象として、学内向け(学生・教職員)と地域向けがあります。以下では、Homecomingイベントを「キャンパスの雰囲気作り」、「地域の雰囲気作り」、「新たなファン開拓」、「地域連携」に分けて紹介します。


Homecomingの一週間前から、キャンパスと地域を巻き込んだ雰囲気作りが始まります。

※#番号は表中のイベント番号を表します。


1.キャンパスの雰囲気作り

  • キャンパスや地域を学園祭色にデコレーションすることを競うSpirit Splash Decorating(#1)がまず始まります。週の後半には、自撮りの写真で大学愛を表すコンテスト( Spirit Selfie、#13)も開催されます。

  • さらに、多くの学生が食事をする食堂に隣接するブックストア―では、大学ロゴが入った服が15%オフのセールが開催されます。また、指定のバックに詰めたものは全て15%オフになるイベントも開催されてます(#2)。同じ建物内では、建物の窓をみんなで一緒にペンキで塗るイベント(Window Painting)も開催されます(#4)。

  • キャンパスの中央に位置する広場(Arévalo Student Mall)では、学園祭スタートを告げる Homecoming Kick-Offが行われます(#3)。

  • 全ての人が参加できる環境づくりという点では、カミングアウトデー(10月11日)に合わせて、"Top That" Cake Decorating Competitionが行われます(#5)。このイベントは、展示してあるケーキのデコレーションを、会場にあるもので作り挙げるイベントです。

  • 週の中盤、水曜日の夜には、地域の人も参加できるコメディーショーが開催されます(#7)。

  • キャンパスの雰囲気作りには、学長も参加します。音楽とフィットネスを融合させたZumbaクラス を、EWU26代学長の Dr. McMahan氏自ら教えます(#8)。

  • キャンパス全体を使ったナゾトキ( Campus Clue Competition)も開催されます(#9)。

2.地域の雰囲気作り

  • マーチングバンドとチアリーディングチームがキャンパスダウンタウンを盛り上げる、 Pep Rally & Bonfireが行われます(#10)。

  • 地域の恒例行事として、キャンパスダウンタウンに設置された特設コースを5人一組でベッドを押して回る、Bed Racesも行われます(#11)。

  • メインのアメリカンフットボール試合が行われる土曜日の前夜には、VIPイベントである、 An Evening for Red Turf Royaltyが行われます。普段見られない、バックステージへのアクセスや、特別ディナー、そして、同日夜に行われるアイスホッケーの試合でのVIPシートなどがセットになって、お一人様$75(約10,000円)です(#16)。

  • 試合前に、OBや地域を盛り上げるイベントにも手抜きはありません。アメリカンフットボール試合開始4時間前の正午からは、アメリカンフットボール場脇の駐車場にて、ファンやOBが触交流を深めるイベント、 Alumni & Family Engagement Zoneが開催されます(#19)。

3.新たなファンの開拓

ホームカミングウィーク中には、日ごろ大学キャンパスを訪れない多くの人が、キャンパスを訪れます。ホームカミングのメインイベントというと、アメリカンフットボールですが、多くの人にアメリカンフットボール以外のスポーツも応援してもらう仕掛けとして、ホームカミングウィーク中、多くのホームゲームが予定されています。

  • 10月14日:サッカー試合 vs. サクラメント州立大学 (#15)

  • 10月14日:バレーボール vs. アイダホ大学 (#17)

  • 10月14日:アイスホッケーvs. ユタ大学(#18)

  • 10月15日:アメリカンフットボール vs. サクラメント州立大学 (#20)

  • 10月16日:サッカー vs. ポートランド州立大学 (#21)

4.地域連携

大学サークルが主体で行っている奨学金への募金活動(Car Bash - Hosted by Sorority & Fraternity Life)が行われます(#6)。 また、NPOによる献血活動( Blood Drive with Vitalant)も開催されます(#14)。


5.まとめ

 ホームカミングウィーク中には、キャンパスと地域が、一体となって盛り上げる仕掛けがありました。例えば、上記に上げたキャンパス内のイベントのロケーションに注目すると、大学スポーツ施設周辺や、学生が最も集まる場所で企画されています(下記図の赤丸参照)。大学のステークホルダーをどうのように巻き込んで、愛校心を育てていくか。そして、長い間支援をしてもらうか。近年、寄付金集めにアイディアを絞る日本の大学にも、参考になる点が多いのではないでしょうか。




参考文献


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