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  • 執筆者の写真Masaru Ito

大学スポーツを通じた地域貢献活動と、学生選手の参加動機について

日本の大学において、大学スポーツを通じた地域貢献活動が、時折ニュース等で取り挙げられます。そこで、地域貢献活動(Community Service/Engagement)を強く推進している、アメリカ大学スポーツを統括する団体の一つ、NCAAの活動を、参加する学生選手の参加動機の研究と併せて取り挙げます。



1.地域貢献活動の位置づけ

NCAAは、地域貢献活動を必須条件とはしていませんが、 NCAA(2022)によれば、女子学生選手の 90% と男子学生選手の 87% が年に数時間以上の地域貢献活動に参加をしており、その内、ほぼ半数の学生選手は 毎月数時間は活動に参加しているとの事です。

一方で、地域貢献活動の位置づけは、大学によって異なり、運動部活動の一環として、一定時間以上の活動を必須とする大学や、全学生に、活動への参加を必須とする大学もあります。例えば、 University of the Incarnate Word(2022)では、卒業までに45時間以上の地域貢献活動への参加を義務付けています。


2.地域貢献活動への参加動機

Boleska(2018)によれば、学生選手の地域貢献活動への参加動機は、価値、理解、キャリア、向上、社会性、保護と述べています。

  • 価値:人道主義や、恵まれない人々の支援などへ重要な価値を感じ、それに基づいて自発的に行動する。

  • 理解:活動を、通常は使用しない知識、スキル、および能力を行使する新しい学習経験・機会ととらえ行動する。

  • キャリア:活動を通じて、将来のキャリア経験を積むことを目的に行動する。

  • 向上:活動に参加することで、心理的な成長や向上など、自己のニーズを満たすのを目的に行動する。

  • 社会性:活動に参加することで、周囲の人々との社会的関係を強化することを目的に行動する。

  • 保護:活動に参加することで、自分の幸運に対する罪悪感などの、否定的な感情を軽減することを目的に行動する。

以上の参加動機は、運動部学生だけではなく、一般学生にも共通するものと述べられています。


3.NCAA地域貢献活動の事例

ここでは、21年度に行われたNCAA地域貢献活動を紹介します。

  1. NCAA Team Works Award: NCAA Team Works は、地域貢献活動参加時間が最も多い大学、もしくは、最も影響力のある活動を実施した大学を表彰するもので、約8万人の学生選手が参加しています。詳しくはこちらから。

  2. Police Athletics for Community Engagement:NCAAが主催する全米大学野球選手権( Men’s College World Series)の開催地の団体と協力して、団体と地域の課題解決に取り組む活動です。昨年度は、ネブラスカ州オマハの Police Athletics for Community Engagement と連携をして、地域に少年野球リーグを普及させる取り組みを共同で行いました。詳しくはこちらから。

  3. Legacy Restoration Program:NCAAは、全米バスケットボール選手権が行われる地域での、バスケットボール普及を目的に、地域の団体と連携をして活動を続けています。昨年度、女子準決勝・決勝(Final Four)が行われたミネアポリスでは、新しいバスケットボールコートと課外活動が行えるoutdoor learning centerが整備され、バスケットボールクリニックも行われました。詳しくはこちらから。

  4. 2023 Men’s Final Four internship course to local university students:2023年度、NCAA男子バスケットボール準決勝・決勝(Final Four)は、テキサス州ヒューストンで行われます。NCAAは、ホスト大学である地域の4大学と連携して、全米選手権でのインターンシップを、正式な大学カリキュラムとして地域の一般大学学生に提供します。この2学期制のカリキュラムは、「メジャースポーツイベントのビジネス」と題され、テキサス州ヒューストンに在住する、60 人の大学生が参加することができます。詳しくはこちらから。

4.まとめ

運動部学生の地域貢献活動への参加動機を理解することは、学生選手が高いモチベーションを維持して、継続的に活動に参加する為に重要です。同時に、活動を通じた社会経験をより良いものにする為にも、指導者、大学や地域にとって、効果的な活動計画を立案する為に、貴重な情報となります(Sergent & Sedlacek、1990)。

Boleska(2018)は、運動部学生が地域貢献活動に参加する理由として、上記参加動機に加えて、チームメイトや指導者とのつながり、市民としての義務感、そして地域大学の学生選手としての社会的責任感などを挙げ、活動を通じて地域へ恩返しをする必要があると感じている、と述べています。

同研究では、活動を通じて参加者が経験するメリットが、参加動機に関連している場合、参加者は、将来継続して地域貢献活動に参加する可能性が高くなると述べていることからも、運動部学生個々のニーズに合った地域貢献活動を検討することで、学生選手、大学そして地域にメリットのある活動が出来ると考えます。

参考文献

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