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執筆者の写真Masaru Ito

大学におけるスポーツ活動の「強化」とは

大学におけるスポーツ活動の「強化」を再検討し、その活動を通じて大学生のキャンパスライフを充実させよう。現在の大学スポーツ活動の「強化」は偏りがあり、大多数の学生に還元される「強化」になっていないのではないか。学生が集まりやすい、目にしやすい、参加しやすいスポーツ活動を「強化(資源投入)」して、手軽に簡単にスポーツを「する・みる・ささえる」仕組みをキャンパスにつくろう。

スポーツ庁(2024)は「大学スポーツ」を学生アスリートだけでなく、多くの学生が健康や社会的スキルを向上させる価値を見いだせる重要な活動と述べている。この定義に沿って考えれば、大学スポーツへの強化(資源投資)とは、学生アスリートを含めた、多くの学生へ還元される事業が対象となる。

一方で、「大学スポーツの強化」というと、多くの場合、「運動部の競技力強化」を想像する人が多いのではないか。では、これがどの程度多くの一般学生のキャンパスライフに還元されているのだろうか。杉本(2022)は、運動部に対する興味全般は30%程度に留まり、そこに所属する学生とのコミュニケーションを希望している割合は低く,その存在は思ったよりも認知されていないと述べている。他の研究でも、大学スポーツの中心的役割を担っている強化クラブの存在を知っている一般学生の割合は20.9%という結果もあり(板倉, 2023)、強化運動部の活動が一般学生のキャンパスライフへ与える影響は少ない。

そこで、一般学生が手軽に簡単にスポーツに触れる機会を作ることを「強化」してはどうか。例えばキャンパス内で行われる公式戦のホームゲームをスポーツイベントとして行う。これを言うと、「本学のチームは強くないから」と言う読者の方もいると思うが、大学生の観戦動機は「競技力」に限定されているものではない。例えば以下のような要因も挙げられている。


1.知っている選手との一体感

池野(2016)は、知っている選手への応援を通じて、観戦者が勝利を「自分のことのように」感じられる一体感があると述べている。学生が運動部に最も期待していることとして、「親しみやすさ」(板倉,2023)をあげていることからも、運動部学生の授業に対する姿勢,一般学生との積極的な交流の機会を増やすことで、競技に詳しくなくても試合に足を運ぶ学生が増えることが考えられる。

2.社会的交流の場

石井(2022)は、大学スポーツが「社会とのつながり」や「交流」の場としての役割を担っているとし、大学コミュニティの中核として、大学関係者同士の結びつきを強める効果があると述べている。Jリーグ観戦者調査(2019)でも「友人・家族に誘われたから」や「試合会場でのイベント・企画が楽しそうだから」が観戦動機のトップ10に入っていることからも、社会的交流を目的に試合観戦に来る人も多いことが伺える。


オンライン授業の導入で週5⽇登校とキャンパス滞在時間はコロナ禍前より短く、学生がキャンパス内で過ごす時間そのものが減っているなかで、学生からはキャンパスにおける人とのつながりが希薄になってきていることに不安の声が聞かれる(全国大学生活協同組合連合会, 2024)。学生が集まりやすい、目にしやすい、参加しやすいスポーツ活動にも「強化(資源投入)」をして、手軽にかつ簡単にスポーツを「する・みる・ささえる」機会を作ることも、今後大学に求められているのではないだろうか。


参考文献

杉本龍勇. (2022). 在校生の大学運動部に対する評価と入学満足度の相関に影響を与える要因. 法政大学スポーツ研究センター紀要, 40, 5-11.

板倉令奈. (2023). 大学生の大学スポーツに関する意識調査: 玉川大学の体育会クラブの在り方について. 学術研究所紀要, (28), 37-42.

池野博章.(2016). 大学サッカーにおける試合観戦動機-応援活動との関係に着目して-

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