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  • 執筆者の写真Masaru Ito

スポーツ庁令和5年度予算から大学スポーツ振興を考える

2022年8月31日、スポーツ庁令和5年度概算要求主要事項が公表されました。総額463億円余りで過去最大の要求額となりました。スポーツ庁概算要求の基となる、3期スポーツ基本計画と併せて、大学スポーツ振興の現場である大学視点で、概算要求と「大学スポーツ振興」の実現について考えました。


 令和5年度は、日本のスポーツ政策の基本方針となる、3期スポーツ基本計画の2年目となります。3期スポーツ基本計画では、平成31年3月に大学・競技横断的な大学スポーツ統括組織として設立された、(一社)大学スポーツ協会(以下、UNIVASという。)と一層連携・協力して、「する」「みる」「ささえる」といった面で大学スポーツ自体の競技振興を図るとともに、大学スポーツによる地域振興を促進し、「感動する大学スポーツ」の実現を目指す。その結果として、UNIVASの認知度及び大学スポーツへの関心度の向上を目指す、と述べられています。


1.感動する大学スポーツ総合支援事業

 スポーツ庁令和5年度概算要求主要事項の概要は、NHKニュースに掲載されていますので、割愛させて頂きますが、大学スポーツ関連は、「感動する大学スポーツ総合支援事業【拡充】」に2億5千万の要求額が計上されています。本事業では、「大学スポーツの振興」と「大学スポーツによる地域振興」とを総合的に支援しUNIVASと連携・協力し、「感動する大学スポーツ」の実現を目指す、と述べられています。



 具体的には、「みる」スポーツとしての大学スポ―ツの更なるムーブメント創出のための「大学スポーツ・ムーブメントの創出(新規)」として、国内外大学アスリートとの対抗戦や競技横断で競う大会などを計画する。また、「大学スポーツ資源の活用による地方創生の促進」として、大学のスポーツ資源を活用し、自治体等と連携して、地域の課題を解決するモデルを展開する、この2点が挙げられています。これらの事業は、令和4年度から継続されている事業で、ムーブメント創出事業は、「現状調査」と「モデル事例の実施」が、地方創生モデル事業は、その公募が令和4年度からスポーツ庁にて始まっています。


 その他にも大学スポーツ統括団体活動支援事業として、大学スポーツ協会が実施する活動の補助が含まれています。具体的には、すでに8大学が認証を受けた安全・安心認証制度( Safety and Security Certification、通称SSC)、コロナウイルス感染拡大防止対策、また第3期スポーツ基本計画にも含まれているスポーツ界におけるDXの推進事業に関連して、「大学スポーツDXの推進」が含まれています。これは、スポーツ基本計画の「先進技術・ビックデータを活用したスポーツ実施の在り方の拡大」と「デジタル技術を活用した新たなビジネスモデルの創出」が反映されたものだと思います。


 資料の最後に「大学連携レガシーネットワーク」とありますが、推測ですが、全国の大学・短期大学と東京オリンピック・パラリンピック組織委員会が各校個別に協定を結んで2014年に始めた大学連携プログラムを指しているかもしれません。


 上記、「感動する大学スポーツ総合支援事業」以外でも、例えば、「地域のおけるスポーツ医・科学サポート体制構築事業」など、大学が連携できる事業も概算要求に含まれていることからも、今後益々、日本のスポーツにおける大学の役割は増していくと感じました。


2.「感動する大学スポーツ」の実現に向けて

 今後、ユニバスがスポーツ庁と協力し、「感動する大学スポーツ」の実現を達成するためには、「大学スポーツ振興の目的の浸透」と大学の「主体性」が不可欠と考えます。


(1)大学スポーツ振興への「理解」

 まず、「大学スポーツ振興」は決して、競技力向上や、強化運動部だけの話ではなく、一般運動部や、その周りにいる一般学生や教職員のキャンパスライフの充実に繋がることを、ユニバスは大学に丁寧に説明していくことが必要と思います。

 例えば、安全安心の環境づくりは、大学によっては強化運動部の方が専属トレーナーなどが配置されていて、一般運動部よりも安全安心な環境がある場合もあると思います。大学スポーツの振興は、すべての運動部が安心して、運動部活動に取り組む環境を整備を目指すもの。よって、運動部が国内トップリーグに所属していなくても、強化運動部がなくても、ユニバスの提供する研修やマニュアルを参考に、各大学毎の安全・安心環境に役立てることが出来ると思います。


(2)「大学が主体的に動く為に」

 結論から述べると、現段階では「主体的に」スポーツ振興を行える大学は限られていると思います。よって今は、ユニバスが専門スタッフを大学に出向させ、統括組織設立準備委員会の外部メンバーや、統括組織の非常勤職員としてユニバス事業を推進するぐらいの支援が必要と思います。


 その理由は、単にマンパワーの話だけではなく、各大学における大学スポーツの歴史的背景や現状は様々で、そこの理解が無いまま、ガバナンスやデュアルキャリア研修をトップダウンで提供しても、本当の意味での浸透や定着につながらないと思うことが理由です。


3.まとめ

 ユニバスは、令和4年度事業計画の中で、2025年までに加盟大学と競技団体をそれぞれ、現在の250大学から400大学、40団体から60競技団体にすることを挙げています(設立準備委員会提示目標)。一方で、大学の経営は、厳しい状態が続いています。日本私立学校振興・共済事業団によれば、22年度定員割れの私立大学は、前年度比7校増の284校。大学全体に占める未充足校の割合は、調査開始以降もっとも多い47.5%となりました(日本私立学校振興・共済事業団、2022)。


 すべての大学経営者にとって、必ずしもスポーツ振興が経営の最優先課題ではないとしても、学生選手の安全・安心環境やガバナンス構築に反対する方は少ないと思います。日本の大学スポーツ振興はまだまだ始まったばかり。先ずは、国がしっかり予算を取って、一大学ずつ着実に加盟を増やしていくことが、真の目的である、学生選手や一般学生の大学生活の充実につながるのではないでしょうか。


参考文献

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