top of page

大学スポーツで大学の研究競争力に貢献する~スタンフォード大学がつくった大学スポーツ研究の基盤~

  • 執筆者の写真: Masaru Ito
    Masaru Ito
  • 4月26日
  • 読了時間: 3分

 国内の18歳人口が減少するなか、大学にはこれまで以上に国内外での競争力が求められています。では、特に留学生はどのような基準で大学を選んでいるのでしょうか。その際に参考にされているとされるのが、世界で最も権威ある大学ランキングの一つである Times Higher Education世界大学ランキング (以下、THE)です。



 THEは、教育、研究、国際性、産学連携など独自の指標で大学を評価していますが、なかでも大きな比重を占めるのが研究力や被引用数といった学術的評価軸です。ここに、大学スポーツが結果として貢献している興味深い事例があります。それが、それがスタンフォード大学の Wu Tsai Human Performance Alliance(HPA) です。

 Wu Tsai HPAは、ランキングや評価指標の向上を目的に設計された組織ではありません。しかし結果として、HPAはスタンフォード大学の研究競争力を下支えする「基盤レイヤー」を形成しています。HPAは特定の学部や研究所に属するものではなく、大学全体を横断する研究プラットフォームとして機能しています。スポーツという実践現場を起点に、医学、工学、データサイエンス、心理学などを結びつけ、分野横断型の研究が自然に生まれる構造をつくり出しました。

 特に注目すべきは、「HPAがなければ生まれなかった研究テーマ・研究者・連携構造」が数多く存在する点です。例えば、女性アスリートの健康や回復を扱う研究は、これまでデータ不足が指摘されてきた分野でした。HPAはこれを中核テーマの一つに据え、スポーツ現場のデータと最先端の分析手法を組み合わせることで、新たな研究領域を切り拓いています。

 また、少額・短期のシード資金を提供する Agility Projects によって、若手研究者や異分野の研究者が参画しやすい環境を整え、そこから大型研究や高被引用論文へと発展する流れを生み出しました。HPAは論文数を直接量産する組織というより、研究が生まれ続ける生態系そのものを構築していると言えます。

 では、日本の大学でこれをどのように実装できるのでしょうか。重要なのは、スタンフォード大学の規模やオリンピアンの存在をそのまま真似ることではありません。現実的には、

①特定の競技やテーマに絞る

②健康・回復・パフォーマンスといった社会的に翻訳可能な問いを設定する

③大学スポーツを研究と結びつける横断的な仕組みを設ける

いわば 「Human Performance Lite」型の設計が考えられます。

 もちろん、大学スポーツはこれまで通り競技力の向上や勝敗を目指す場であり続けることが前提です。そのうえで、競技現場を研究の仮説検証やデータ創出のフィールドとしても活用するという視点を重ねることができれば、学内の研究活動を刺激し、分野横断の連携を生み出す余地が広がります。大学スポーツを「競技の場」と「研究を活性化する場」の両立可能な資源として捉えることができたとき、研究力や被引用数の底上げにつながる、新しい大学の競争力の形が見えてくるのではないでしょうか。

 
 
 

最新記事

すべて表示
学業と競技は誰が両立させるのか──公欠制度に見る大学の責任

大学の公欠制度の再設計が必要。学業と競技の両立の制度支援が不足し責任が不明確なため、大学主導で欠席配慮と代替学修を制度化するべきではないか。 1.背景 大学スポーツにおいて、学業と競技の両立は長年の課題とされている。長倉(2011)は、大学がアスリート学生を受け入れる以上、両者に安心して取り組める環境整備の必要性を指摘している。また、一ノ瀬(2022)も、日本ではこの両立が個人の努力に依存しており

 
 
 

コメント


購読登録フォーム

送信ありがとうございました

©2021 by 大学とスポーツ。Wix.com で作成されました。

bottom of page