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なぜ今、大学は「学生の経験を能力に変える仕組み」が必要なのか

執筆者の写真: Masaru Ito
Masaru Ito
2 日前
読了時間: 5分

 就職活動の早期化や学生の時間制約、価値観の多様化によって、従来の正課外活動中心の人材育成モデルだけでは社会が求める能力を十分に育成しにくくなっていることから、大学生活のあらゆる経験を学びに変換し、その成長を可視化・認証する人材育成エコシステムの構築が求められている。そのため、スポーツ、地域連携、国際交流、ボランティア、ゼミなど大学生活全体の経験に振り返りと能力の言語化を組み込み、一人ひとりの成長を可視化し社会へ証明する仕組みを整備することで、大学の強みを学生の強みへと転換していく。


1.社会が求める能力を大学のエコシステムでどのように支えていくか

2025年の中央教育審議会「我が国の『知の総和』向上の未来像」答申では、大学が育成すべき人材像として、「人々と協働しながら、課題を発見し解決に導く、学び続ける人材」が示された。これまでも、その育成に向けて運動部やサークルをはじめとする正課外活動は重要な役割を果たしてきた。しかし、近年は学生生活を取り巻く環境に変化が生じている。

2025年度の文部科学省「全国学生調査」では、学生は授業への出席率は高いものの予習・復習時間が十分に確保されておらず、文部科学省は学修や学内活動よりも早期化する就職活動への対応に時間が割かれている可能性を指摘している(※1)。また、全国大学生活協同組合連合会「第61回学生生活実態調査」では、「時間が足りない」と回答した学生が37.3%となり、前年から11.2ポイント増加した。さらに、人間関係形成のあり方にも変化が見られる。従来のサークルなどの組織的な活動への参加よりも、趣味や推し活を通じた個別のつながりを重視する傾向がみられ、学生のコミュニティとの関わり方は多様化している。

つまり、現在の学生は、授業、アルバイト、就職活動、趣味や推し活など、多くの活動を限られた時間の中で両立している。そのため、長時間の継続的な組織活動への参加を前提とした従来の人材育成モデルだけでは対応が難しくなりつつある。

今後の大学に求められるのは、「活動を増やして能力を育成する」ことではなく、「すでに存在する活動を学びに変える」エコシステムを構築することである。運動部・サークル、ゼミ、地域連携活動、ボランティア、国際交流、留学、学園祭、学生広報など、大学生活のあらゆる経験を成長機会として位置付け、その経験を振り返り、意味づけし、自らの能力として言語化する仕組みを整える必要がある。

重要なのは、何を経験したかではなく、その経験から何を学び、次にどう活かすかである。大学の役割は「機会を提供すること」から、「経験を学びへ転換し、その成長を可視化し、社会に示すこと」へと発展していくと考えられる。

 

2.その中で、大学におけるスポーツはどのような役割を果たしていくか

こうした大学全体のエコシステムの中で、大学スポーツもまた、学生の成長を支える重要な学習機会として再定義されるべきである。

これまで運動部活動は、競技活動やチーム運営を通じて主体性、協働力、リーダーシップ、課題解決力などを育む場として機能してきた。しかし今後は、「運動部に所属しているかどうか」ではなく、「スポーツを通じてどのような経験をし、何を学んだか」がより重要になる。

また、以前取り上げたように(※2,3)、学生の参加スタイルが多様化する中で、従来の体育会活動だけでなく、地域スポーツイベントの運営、スポーツボランティア、観戦・応援活動、地域住民との交流など、多様な関わり方を認めることも必要である。

その上で、それらの経験を振り返り、能力として可視化する仕組みを整えることで、スポーツは単なる競技力向上のための活動から、人材育成や地域共創を担う教育資源へと発展していく。

すなわち、これからの大学スポーツは、大学生活全体の学びを支えるエコシステムの中で、学生が実践を通じて成長し、その成果を社会に示すことのできる重要なプラットフォームの一つとして位置付けられるべきである。それは、スポーツを教育、地域連携、キャリア形成と結び付けながら、大学全体の人材育成戦略の中に組み込んでいくことを意味している。

 

3.まとめ

結局のところ、どのような人材育成エコシステムを構築し、それを学生に活用してもらえるかは、「その大学がどのような人を育てたいのか」という理念と熱意にかかっている。大学は本来、それぞれ異なる建学の精神や特色を持つ存在である。そして学生もまた、その特色や価値観に共感して大学を選んでいる。だからこそ、大学は自らの強みを教育活動全体に反映し、それを学生の成長につなげる設計を行う必要がある。

大学の強みを学生の強みに変えること。

そのためには、授業だけでなく、スポーツ、地域連携、国際交流、学生自治、ボランティアなど、大学生活のあらゆる活動を教育資源として捉え直し、一人ひとりの経験を学びへと転換していくことが求められる。

大学のすべての活動は教育につながる。

そして、その結果としてどのような学生を育てるのかを社会に示していくことこそが、これからの大学に求められる重要な使命ではないだろうか。


文章よりイメージ図をcopilotにて作成


出典

 
 
 

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